渋谷で逆ナンされた時の話〜映画『ラブ・アクチュアリー』について〜
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- 2018年12月24日
- 読了時間: 4分

渋谷で買い物している時に、30分だけ時間ができた。
一人で30分何をしようかと歩いてたが、特に行く宛もなかったので、とりあえずマックに入った。
年末だろうが関係なく混んでいる渋谷に嫌気が差しながらも、めっきり寒くなってきた中で飲むホットコーヒーMは美味しかった。
マックの店の前で一息付きながら、片手で携帯をいじり、どこか時間が潰せる場所がないか探していた時に、急に目の前に人の気配がした。
僕は顔を上げ、ヘッドホンを外した。
「あの〜、さゆりです!覚えてますか?」
そこには身長が170cmくらいの、白いロングコートを着た女性が立っていた。
真っ黒な髪を降ろしていた彼女は、ヴァネッサ・カールトンに似ていた。

「あ、はい?」
不意打ちを食らった僕は素っ頓狂な声で答えた。
でも、ヴァネッサはまっすぐに僕だけを見つめている。
少し強い冬風が吹いた時、ヴァネッサは僕に言った。
「坂田さんですよね?」
一点、先に書いておくべきだったが、
僕の初恋の相手は、ヴァネッサ・カールトンという女性である。

ある日母が買ってきたCDのジャケットでヴァネッサの存在を知り、
当時小学生だった僕は覚えたてのパソコンでヴァネッサを調べまくった。
サッカーの練習をサボって、家で何度もMVを観ていた。
「これが、恋か」。そう思った。
でも、僕とヴァネッサは文字通り「A Thousand Miles」離れていたため、
僕の初恋は儚くも散ってしまった。
そんなヴァネッサが今、目の前にいる。
しかもクリスマスシーズンという、一年でもっともロマンチックな時に。
僕はすぐに自らを「坂田」と名乗った。
「あ〜さゆりさんね!誰かと思ったよ」
こんな嘘つくのは初めてなので、最後の「誰かと思ったよ」はデクレシェンドだった。
「本当に久しぶりだね!」
ヴァネッサは満面の笑みで言った。
僕も苦笑いで返した。
「この時期に坂田さんと会うと、色々思い出しちゃうなあ」
ヴァネッサはそう言って、少し目を逸らした。
ここで僕は、今僕に与えられた「坂田」の情報を整理した。
まず、ヴァネッサと「坂田」は最近会ってなかったらしい。
そしてヴァネッサがクリスマスに思い出すのは、「坂田」らしい。
絶対、昔付き合っていたじゃん!!!
そう確信した。
いやでも、この「坂田」、多分上等なモテ男である。
こんな美人なヴァネッサと付き合った挙句、今頃どこかでスヤスヤと眠っているのだろう。
なんて野郎だ。
にしても、僕は「坂田」とヴァネッサの関係が気になった。
「一体どれくらい付き合っていたのだろうか。」
「どうやって知り合ったのだろうか。」
「どんな恋愛だったのだろうか。」
僕は、映画『ラブ・アクチュアリー』を思い出した。
僕のベスト恋愛映画では3本の指入ると言っても過言ではないし、色んなカップルが出てくるし、
何と言っても今、クリスマスだし。

「坂田」がイケメンだったことを踏まえると、やはりあの大統領カップル的な恋愛をしていたのであろうか。
ヒュー・グラントのイケメン具合もさることながら、
等身大の王道ラブ・ストーリーはやはり多くの人の胸を打ったことだろう。
いや、でもこれはないな。
なぜなら「坂田」はイギリスの大統領でもなければ、そんなダメ男でもなさそうだ。
ヴァネッサを落とすくらいなら、ベタなことよりもセンスのいいことを選ぶ、「坂田」はそんなタイプの男だろう。

とすると、やはりリーアム・ニーソンが演じるこの役みたいな感じなのか。
様々な物語がクロスオーバーする本作において、この親子愛の描き方はとても秀逸で、
「父と息子の友情」という意外と描かれてこなかったストーリーも、映画全体の幅の広さを感じさせるものになっている。
いや、でもこれはないな。
だって「坂田」は多分奥さんを亡くして悲嘆にくれている人じゃなさそうだから。
仮にそうだったとしても、こんなに可愛らしい息子は生まれていないだろう。
仮に生まれていたとしても、ドラムにハマる前に、ヴァネッサの影響でピアノを弾いているだろう。

いや、これも違うか。
こんなにいい恋愛をされてしまったら完全に僕の負けだ。
そもそも、「坂田」は日本人だろう。
「坂田メンディー」とかじゃないだろ、流石に。

いや、これも違うか。
ヴァネッサは多分AV男優とは付き合わないよな。

絶対違うな。
「あたし、そろそろ行くね。」
ヴァネッサのその一言に現実で引き戻された。
僕は戸惑いながらも「おう」と小さく返事すると、左手をポケットから出して振った。
ヴァネッサは少し笑うと「またね」と言い、僕と同じように左手を振った。
また少し強い風が吹いた。
ヴァネッサはそのまま左手で髪をかき分けると、僕はその薬指に光るものが付いていることに気づいた。
小さいが、その輝きは本物のように見えた。
ヴァネッサは寒そうに体を丸めると、指輪の付いた左手をポケットにしまい、大通りへ歩いて行った。
それから風が吹いたかは、あまり覚えていない。
てか、よくよく読んだら「逆ナン」じゃなかった。
「人間違い」だった。
しかも直してないし。
悔しいから今日は『ラブ・アクチュアリー』を観る。
にしてもヴァネッサ、マジ可愛かった。
普通に「人間違い」ですよって話せばよかった。
馬鹿なのか、俺は。「坂田」に負けてるぞ。
ちくしょう。
てか、坂田って誰だよ。
<Trailer: "Love Actually">
<すでに映画を観たことある人にはこれがおすすめ>
メリー・クリスマス!
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