ダメなまま丸ごと抱き締めてくれる癒し系バンド
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- 2018年9月3日
- 読了時間: 3分
更新日:2018年9月4日
皆さんは普段、「癒やし系」音楽を聴きますか?
今週も頑張った〜なんて日の夜だったり、午前中に片づけを済ました休日の午後だったり、そんな時に皆さんがお昼寝のBGMとして聴きたくなるのは誰ですか?
やっぱりNorah Jonesですか?いや、もうちょいチルな感じでColbie Caillatですか?
疲れた身体をほぐしてくれる、まるでバブみたいな存在。それが、「癒やし系」音楽です。

そんな細く長く続いてきた「癒やし系」音楽に、最近新しい風が入ってきた。
今回の記事ではそのバンドを紹介していきたい。
彼らの名前はThe Magic Gang。かわいい名前だ。
イングランドのブライトンという海の街で2017年に結成されたバンドだ。
20代前半の男性4人組で、Weezerの初期を想起させるダウンな感じのギターポップが特徴で、だるそうに歌う感じでガレージ臭さすら感じさせる。
でも僕はこのバンドを知ったときに、ある違和感を感じていた。
まずは聴いて頂きたい。
この完全にドラッグが切れ始めている顔、
人生に何も期待していない顔、
頭が何も働いていない時の顔。
顔がうぜえ。薄い顔なのに、主張がすごい。もう音楽なんて入ってこない。この顔がうざすぎる。
もう台所に人が来てもお構いなしである。
このたまにいる真顔でウケを狙いにくる人種。
結果的にこういう顔したやつらが4人集まって、ダウナー系のギターポップをやるとこんなアルバムのジャケットができる。

ちょっとおもしれえ。
何でこんな自信満々な顔ができるんだ(特に水色のやつ)
あと何で全員何とも言えない色のシャツ着てるんだ。
どこに売ってるんだ、これ。HARD OFFか。
これで自分たちの名前に「Gang」を付けるというね。
皆さんだったら、できますか?
僕?絶対できないですよ。怖いですもん
音楽的には、2000年代初旬に流行したギターポップに鎮静剤を打ったような音楽で、Weezerのメンバーがヒッピーだったら、多分The Magic Gangみたいな音楽をつくる。
そんな彼らの歌詞には、一貫して「頑張らない」姿勢が出てくる。
「Getting Along」の歌詞では、散々意中の人の話をした挙句、
"No one understands why. I've been staying up all night, think it's right for me to try and work it out."
「何で僕が眠れないかなんて、誰にも分からない。がんばってみるのが、正しいかもしれない。」
"But now I'm lying down."
「でもまだ横になってるんだ。」
彼らには、意中の人を追いかける気も、台所に人が入ってきても、何もするつもりなどないのだ。何も頑張る気がないのだ。
むしろあの真顔で見つめられていると、「何で頑張っているの?」と言われた気分になってくる。
そして、あのブサイクな顔で、頑張っても何もできない自分を歌い飛ばそうとしてくるのだ。
この脱力感こそ、僕は「癒し系」音楽に一石を投ずる、新たな音楽だと思う。
仕事でどんなに頑張っても結果が出ない、何かを学んでもまた忘れてしまう、ただ増えていく仕事、減っていく癒し、
そんな日々を丁寧に真面目に生きているあなたに、ブサイクな顔で「今日は諦めな」と言ってくれるこいつらの潔さ。
ダメなまま肯定してくれる、ダメなまま包み込んでくれる、バブではなく、どちらかと言うとぬるま湯的な音楽ではないだろうか。
辛いことなんで日常ベースで起きてくるものだし、一回一回凹んでいる暇もないのが現実だ。そんな時にThe Magic Gangは諦めることを認めてくれる。それはある意味、「癒し」なのではないだろうか?
そして本当にしんどくなったら、一番ブサイクなベース担当の胸に飛び込んでみよう。
彼はいつでも僕らを待ってくれているだろう。
腰を振りながら。
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