Kendrick Lamarは『DAMN.』で何を伝えたかったのか〜日本人としてKendrickを読み解く
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- 2018年9月17日
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「この世で一番かっこいい音楽は、ロックである」
(今でも)そう信じて疑わない僕に、新しく「ヒップホップ」という巨大なジャンルを見せ付け、引きずり込み、気づいたらフジロックで「DNA!」と叫ばせてくれたアーティストがいる。
それが今世界で一番アツいラッパーである、Kendrick Lamar氏である。
とにかく彼のラップやトラック、MVがかっこよく、黒人差別の問題を大胆に鋭く表現してくるスタイルは、長い音楽の歴史に置いても珍しい。
そんなケンドリック氏だが、本年、最新アルバム『DAMN.』で、ピューリッツァー賞の音楽部門を受賞した。
これは割とまじですごいことである。
ピューリッツァー賞といえば、

この有名なハゲタカの写真を撮った写真家がピューリッツァー賞を受賞したように、社会の問題や闇をいかに卓越した表現で作品に表すかなどが、審査基準となっている。
ただピューリッツァー賞には昔から音楽部門があったが、クラシックなどが受賞することが多く、非常にアカデミックなものであった。
Kendrickはそこに、コンプトンの砂が入った靴を履いたまま、上がりこんだ。
というわけで今回の記事では、Kendrickが『DAMN.』を通じて私たちに何を伝えたかったのか、本気でじっくり読み解いて、猿でもわかるようにここに落とし込もうと思う。
とはいえ、今回大事にしたいのは、Kendrickの歌詞を日本人として受け止めた時に何が残るのだろうかという点である。
例えば、ピューリッツァー賞での審査委員の解説は次の通りである。
「"本物"の黒人の言葉や文化、リズムのダイナミズムによって統一された名曲集は、心を震わせるものであり、現代のアフリカ系アメリカ人の複雑な人生を捉えている」
こんなの普通の日本人が持ち得てる感覚から、かなり遠い。
だからKendrickの言いたいことを全身で理解することは、日本人にとってはものすごく難しいことだと思う。
だからこそまず『DAMN.』におけるKendrickのメッセージを解読し、
その上で一人の日本人としてどのように受け取ったかと書こうと思う。
こりゃあ、大変だ。
1. BLOOD. → 2. DNA.

盲目の女性が歩いている。なんども同じ場所でうろうろしているため、道で何かを無くしたようだ。
ケンドリックはその様子を少し伺ってから、「一緒に探しましょうか?何か落し物ですか?」と優しく声をかける。
盲目の女性は答える。「そうなの、"あなた"が命を落としたの」
その瞬間、銃声音。
1曲目の「BLOOD.」は、そんなかなりショッキングな内容から始まる。
銃声のあと、ケンドリックのグラミー賞でのパフォーマンスを批判したFOX Newsの実際の音声がフェードインしてくる。
女性アナウンサーが悪態をついた瞬間、2曲目の「DNA.」で「自分は黒人のDNAに従ったまでだ」と激しくラップが始まる。
いきなりまじでかっこいい。
「DNA.」では、ケンドリックのルーツであるアフリカンアメリカンとはどういうものか、そして彼の地元であるコンプトンで育つのが、一体どういうことなのかを強烈に描く、攻撃的な一曲になっている。
まるで自分の血(=DNA)が、自分自身の暴力的な一面を作り出すものであり、同時に平和的な一面も映し出す、かつそれこそが至って普通の黒人であることを述べているように聞こえる。
例えば、「DNA.」にはこんな歌詞が見受けられる。
「Got war and peace inside my DNA」(戦争と平和が血に刻まれているのさ)
「I don't contemplate, I meditate, then off your fucking head」(くよくよ考えないで、まずは瞑想してみるのさ。その後お前の頭を吹っ飛ばすのさ)
「My DNA not for imitation, your DNA an abomination」(俺のDNAは本物さ、お前のDNAには虫酸が走るぜ)
またこの曲には非常にわかりやすいMVが付いている。
なぜか手錠がかけられているケンドリックに、一人の黒人警官が近付き、吐き捨てるようにいう。
「DNA stands for "Dead Nigga Association".」(DNAって、"死んでいった黒人の集まり"なんだよ)
どれでも凛々しい顔で座っているケンドリック。
そこで操作を続けようとして警官に、電気ショックが走り、気づいたらケンドリックの代わりに全身で「DNA.」をラップしている。
それはすなわち、黒人としてのプライドやマインドを忘れたように見える黒人たちにも、ケンドリックと変わらない、黒人のDNAが流れており、それには逆らえないということを表現しているように思える。
すごく内省的ではあるが、まずは改めて最初の2曲で自分が"本物"のラッパーであることを証明しにきている気がする。
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